2023.8.4 半径(R)キックオフイベント開催レポート

半径

2023年8月4日(金)に、アートプロジェクト「半径(R)」のキックオフトークイベントを開催しました。

会場は尼崎市役所開明庁舎2階。
夕方18時からの開催とは言え暑さの残る中、多くの観客が会場に足を運んでくれました。

登壇者の紹介

登壇者は、東京から久村卓さん(https://takuhisamura.com/)、群馬から村田峰紀さん(http://mineki-murata.com/)、北海道から風間天心さん(http://www.tengshing-k.com/)、そして主催アーティストでもあるGERMAN SUPLEX AIRLINESの前田真治さん。

登壇者の自己紹介では、久村さんは現代アートの系譜についての説明を交えながら自身の活動を紹介し、村田さんはドローイングパフォーマンスによる表現を会場で実演、風間さんは曹洞宗の僧侶であることや、平成から令和に改元される際におこなった平成のお葬式という作品を紹介されました。
前田さんは、会場である開明庁舎で4年前に展示した、その場所の土地代と同額になるまで集めたハズレ馬券の作品を紹介し、現在は尼崎で社会課題に対峙する作品制作を行なっていることを紹介しました。

登壇者のみなさん。
左から久村卓さん、村田峰紀さん、前田真治さん、風間天心さん。
事項紹介する久村さん。
アート作品を紹介する久村さん。

地域の課題解決にアートができることは

ここから、本題であるアートプロジェクト「半径(R)」について、タイトルの由来やコンセプトを前田さんが解説。

タイトルは、開明庁舎を中心とした半径○○mの円状のエリアで繰り広げられるアート活動であることに由来していて、その活動のコンセプトは「より良い街にしよう」という行政や自治体が行う地域に対するケアを、アーティストの視点から行うとどうなるか、というもの。

参考事例として、歩行者専用道路なのに自転車に乗って通行している方への注意喚起を目的とした自転車の作品(噂を作ってルールを守らせる為の犠牲車両)や看板の作品(『禁止』の手前、内側、裏側。)、街の壁に違法に描かれた落書きに対する作品(SEE WHAT I ‘M SAYING(fillers))など、これまでに前田さんが尼崎市内で制作、展示してきた作品が紹介されました。

登壇者によるトークセッション

そして半径というアートプロジェクトの方向性や可能性について、登壇者それぞれが意見を出し合うトークセッションが繰り広げられました。

村田さんからは、喫煙のルールが国によって違い、それぞれ街の美化につながっていることを例に、作品(物)の展示だけではなくルールをアーティストが提示するという可能性もあるのではないか?といったアイデアや、久村さんは、住民の意見を吸い上げるためのワークショップを開催するのもいいんじゃないか?と提案するなど、白熱した議論が交わされました。
(トークセッションの様子はこちらの動画をご覧ください)

会場の様子
会場の様子。みなさん熱心に聞いてくださいました。
作品アイデアを紹介する前田さん。

第1回の半径ではどんな作品が展示されるのか

トークセッションの最後には、前田さんから、第1回の半径で制作を考えている作品アイデアが披露されました。

箱のような物体を繁華街などに置き、その箱に対して送られてきたクレームをすべて反映させるというアイデアで、例えば「角が尖ってて危ないじゃないか」とクレームがきたら箱の角を丸くする、「自転車のペダルに当たるじゃないか」と言われたらペダルのスペースだけカットする、というイメージ。タバコをこすりつけられたらその跡が残り、お酒をかけられたら変色する。
作家が手を加えず、市民意識や、民度によって削られていく彫刻作品で、クレームが来なくなり、その箱がそこに存在することを許容される形が作品の完成形となります。

もちろん、半径を進めていくなかで、別の作品アイデアに変わることもあり得ますが、その作品が街で展示されるまでにどういったストーリを描くのか、また、他のアーティストは尼崎市にどういった作品を提示するのか、引き続きこの活動に注目していただけたらと思います。

活動詳細はGERMAN SUPLEX AIRLINESのInstagramで随時配信 <Instagramはこちら>

(文:多田銀次郎)